Vol.4 「感謝されない整体院!?」
こんにちは! 池袋バランス力学整体院の山本浩一朗です。
今年は天候の影響もあって、サクラの花びらがあっという間に春風に乗って美しく散りましたね。そして、当院のお客さまYさん(70代女性)から嬉しいご報告をいただきました。「生まれて初めて桜をゆっくり観ることができました。とてもキレイだった。」と。今まで自分を犠牲にしてまで頑張ってこられたYさんが、ご自身と向き合い、自分で体の不調を治癒できたことで心に余裕ができて、桜の舞う姿に喜びを感じられたようでした。とても嬉しそうに語るYさんをみて、私も嬉しい気持ちでいっぱいになりました。ありがとうございました!
さて、前回のコラムで、「皆さまが私をアドバイザーとして上手に利用していただいて、結果を出すどころか、おこがましいですが、どんどん成長されている方が多いように観じます」とお伝えさせていただきました。それに対して「どのようなところで成長を感じますか?」というご質問を数名の方から受けました。私なりの回答は色々ありますが、分かりやすい例では、私に対する感謝の言葉が少ないところです(笑)。体験談にしても、他の治療院では先生に対する感謝の言葉が多いのが一般的です。しかし、当院では感謝の言葉より、「自分で治せるようになった」「自分の体に自信が持てるようになった」とご本人が自身の力でよくなって、自信をつけられたことに喜びを感じられている方が多いです。これは私としては非常に嬉しいことです。患者と治療家という立場でよく見られる共依存関係や孤立した関係ではなく、どこまでが自分の責任かという境界線のある自立した健全な相互依存関係(協力関係)がある程度できている証だと思います。その関係の中で、体の不調もあって自分に対してどちらかといえば否定的だった方が、自分自身を受け容れる力が高まったことで、自分に対する信頼、つまり自信が深まっているのだと感じています。
自分に対して否定的になることは、日本人の国民性とも言われています。ですので、多くの日本人は「自己肯定感」が低いと言われています。実際、高校生を対象とした調査では、他の国に比べて日本人の「自己否定感」が飛びぬけて高いという結果が出ています。これは高校生だけでなく、日本全体にも当てはまると思います。その結果を受けてか、世間では自己肯定感を高くしようという意見をよく耳にします。しかし、私はその意見には賛成できません。今の自分に否定感を持ったまま肯定感を高めようとすれば、無理なプラス思考をする人が増えて、慢性痛だけでなくうつ病など精神的疾患を持つ人まで増えてくると思うからです。実際、自己肯定感が高いアメリカの子供には精神的疾患を持つ人が多いようです。目指すところは、肯定でも否定でもなく、あるがままの自分を受け容れる「自己受容感」を高めることが大切だと観じています。
そこで、私の家族関係を例に挙げます。このコラムで何度か登場している私のおじいちゃんは、小さな田舎町で多くの人に慕われていました。祖父は絵に描いたような人徳者ではなく、私から見ると校長先生をやっていたと思えない多趣味の遊び人でした。絵画、囲碁、将棋、舟、釣り、お茶、読書……。とにかく好きなことをトコトンやって日々楽しんでいました。私は、そんなおじいちゃんが大好きでした。祖父は幼い私に対しても一人の人間として尊重し、対等に接してくれました。私の行動に対して「○○したからいい子だ」と条件付きで誉めるようなことはなく、私の存在そのままを無条件に受け容れてくれていた気がします。祖父は自らをある程度あるがまま受け容れていた――つまり「自己受容感」が高かったからこそ、孫の私だけでなく、多くの人を受容することができていたのだと思います。
逆に、母親は多くの日本人と同じように「自己否定感」が強かったように観じます。父が仕事で家にいない環境で、校長先生の孫を育てるプレッシャーもあったのだと思いますが、母は自分に否定的で自信がないから、幼い私に対して「あなたはダメな人間だ!」と存在否定とも取れる暴力的な言葉をよく浴びせられていました。私はそんな母が嫌でした。また、私はおじいちゃんに受け容れられているという心の拠り所があったからなのか、母の「ダメだ」という意見に従うことはできませんでした。そして、母に反抗する形で、私は「自己肯定感」が高くなったのだと思います。「僕はダメな人間じゃない。素晴らしい人間だ。」と。しかし、このような肯定感は健康的ではありませんね。幼いころの私は、前述した「無理なプラス思考」の状態でした。大袈裟に言えば、自分に苦手なことがあるという当たり前のことを認めないで、「自分は何でもできる」と自分を鼓舞していました。母が言うような人間ではないことを証明するために。その結果、無理をして体調を崩すことが多かったです。
ただ、よく考えてみると、私の母は自己否定感が高いがために子供と対等に接しないという日本では一般的な親だったのかもしれません。実際、前述した高校生を対象とした調査で、日本はダントツで親に評価されていないと思っているという結果も出ています。母の対応は日本ではよくあることなのかもしれませんが、 “普通”ではない祖父の存在に触れていたから、私は母の存在に強い違和感を持って反発しすぎていたのかもしれません。子供の時は辛く感じることもありましたが、今ではこの恵まれた家庭環境で私は成長できたと思っています。日本の多くの人は子供時代に自己否定感が強い親の言うことに従って、いわゆる「よい子」になろうとしているようです。ここでいう「よい子」とは、あくまで親の価値観から見て「よい子」です。しかし、全てに従うことはできませんので、周りがどんなに評価しても、親の期待に添えない自分をダメだと強く思ったり、全てを親に依存して精神的に自立する機会を失ったりして自分に自信が持てなくなって、自己否定感が強くなっていく傾向があるのだと思います。
当院を利用して、皆さまの「自己受容力」や「自分を信じる力」が高くなっているのは様々な理由があると思いますが、提供しているプログラムの中で、特にセルフカウンセリングを習慣にして実践されていることが一番の原因だと私は思っています。自分の不完全さや弱さに背を向けて、体の痛みに変えていた感情やこだわりをしっかり観じて受け容れていくことで、痛みをつくる機会が減っていくだけでなく、どんどん自分の気持ちを分かってあげることができるようになるからだと思います。もちろん、人間にはどうしても受け容れがたい感情に直面することを避けることで、自分の心を守ろうとする防衛本能があります。しかし、自分をごまかして体の痛みに変えている感情は、心を守るものではなく、自分で感情を感じないように習慣的に行っているものがほとんどですので、その感情に気づくことはコツさえつかめば簡単です。できるだけ無防備になって、自分の感情を観て、自分の感情にじかに触れること。そして、自分から逃げるのではなく、自分自身について関心を持って学ぶことが大切です。「私って、こんなことでこんな風に感じているんだ~」と。良い悪いと判断するのではなく、ただ認めて受け容れていくことです。悲しくて、情けなくて、怖くて、恥ずかしくて、みっともなくて……。どんな自分がでてきても自分以上(自己肯定)でもなく、自分以下(自己否定)でもない、等身大の自分をしっかり受け止めてあげる。体の痛みに対しても否定的でなく、自分で体が痛くなるべくしてなったこととして、そのまま受け容れてあげる。そうすれば、 自身の不完全さを受け容れて、 自己受容力が増して自分の存在をより愛おしく感じるようになっていきます。また同時に、自然に他人も受け容れられるようになって心から優しくなれます。
皆さまの「自己受容力」が高くなればなるほど、前回もお伝えした通り、私自身もさらに成長していく必要性を感じさせていただいています。勝手ながら、このような有り難い環境をお互いに創っていける素晴らしい関係を続けていきたいと思っています。そして、当院の活動が結果的に、日本人の「自己受容感」を高めることに少しでも貢献できれば最高ですね。今後ともご協力よろしくお願いします。
『あなたがいつまでも元気でありますように・・・』
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました!
院長 山本浩一朗