Vol.8 「信頼性の高いエビデンスとの付き合い方」
こんにちは! 池袋バランス力学整体院の山本浩一朗です。
年末を迎えて、冷え込む日が多くなりましたね。外出自粛の影響に寒さも手伝って、「おこもり」生活になっていませんか? 自粛生活は感染症予防の効果はありますが、人との交流や身体活動量が減少することで、カラダや脳の不調に陥るリスクが高まります。
昨年もお伝えしましたが、新たな経験をして新鮮に満ちた日々を過ごすことで、私たち人間は充実感を覚えやすいものです。例えばガーデニングや家庭菜園は、手軽に始められるのでオススメです。おこもり気味だなという人は、自発的に行動して、自身の脳が慣れていない新鮮にもっと触れてみましょう!
さて前回のコラムでは、『あなたの健康を左右する感情との付き合い方』をお伝えしました。「自分の感情を自らコントロールできないことを心の底から理解することが、大切だと実感しています」、「以前は自分が特別にマジメだと信じていたので、受け入れたくない感情を否認するクセがありました。でもココに来てから、自分の感情との付き合い方を変えて現実と向き合えるようになったので、心身ともにラクです」……など、ご感想やご報告ありがとうございます。
また、「先生は感情の付き合い方が上手そうですね。特に新型ウイルスに対しても冷静でしたし、以前に先生に教えてもらっていた対策が当たり前になってきましたね」とも。感染症対策について聞かれたときに、当時の世間の意見とは違うことを私がお伝えしていたのは、以前のコラムの通り、エビデンス(科学的根拠)を基に情報をお伝えしていただけです。さらに「論文などを読むときに注意していることはありますか?」といったご質問をコロナ禍で数人の方からいただきましたので、今回はその際にお伝えしたことをご紹介させていただきます。
科学の世界では、「何も誰も信じず疑わず、ただ試して確かめよ」といわれています。私は科学者ではありませんが、その心構えは大切だと思っています。そして私は科学的根拠に対して、「信じない。疑わない。ただ受け入れる」といった考えで付き合っています。といってもよくわからないですね(笑)。説明します。まず「信じない」。科学的根拠は、いま現時点で最も確度が高い「仮説」です。10年後には全く反対の研究結果が、最も確度が高いと評価されている可能性があります。だから、いま高く評価されているエビデンスが、絶対的な永遠不変の真理だと妄信しないことが大切だと考えています。
次に「疑わない」。私たちの多くは、自分が生きてきた経験で物事を判断しやすいものです。しかし科学では、個人の経験は科学的根拠がないものと位置づけられています。当然といえば当然なのですが、私たち人間は感情的には自身の体験をベースに考えたくなるものです。また自分の体験だけでなく、TVなどの通信販売のように他人の経験も共感することで、参考の対象になりやすいです。さらにメディアで発言する専門家の評価さえも、科学の世界ではエビデンスレベルがほとんどないものとして扱われます。
研究結果の多くは、科学者・研究チームが英知を結集して、営々と尽力した結果です。ただ論文は誰でも発表できますので、研究結果にはレベルがあります。その研究結果を評価する専門機関で、公正な基準で評価されています。根拠がない論文を引用して、「この論文のとおり、科学的に証明されている」といった怪しい広告とはまったく別物です。もちろん多少の間違いなどがあるかもしれませんが、確実に私のような素人の考えより確度は高いです。私が生きてきた経験をベースに判断すると、科学的根拠が高い研究結果を「それは違う!」と処理しかねません。もし本気で疑うのであれば、私が研究して証明しないと結果が出ないので、疑うだけムダだと考えています。
そして「ただ受け入れる」。私は科学的根拠に対しては、自分の感覚や好みは無視して、「今後は変わるかもしれないけど、現時点ではこの研究結果が最も確度が高い」と受け入れるようにしています。この考えが正しいとはいえませんが、私自身はこのように科学的根拠と付き合っていくことが、結果的に皆さまのお役に立てると今は思っています。
バランス力学整体院で扱っている慢性的なカラダの不調に対して日本の現状は、整体院だけでなく病院でも過去の知識・治療方法をもとに、慣習や個人的な勘に偏り過ぎて、「独りよがりな治療」に陥っている傾向があります。しかし、医学界にはEBMという概念があります。EBMとは「Evidence-Based Medicine」の略で、根拠に基づく医療という意味です。特注医療とも呼ばれるEBMは、現時点で入手可能な最良の根拠を把握したうえで、多様性のある個々の人々にとって最善の医療を提供しようとする一連の行動指針で、サイエンス(科学的根拠)とアート(医師の臨床技能、個人の状況)の統合を意味します。
当整体院では医療の提供はできませんが、最新の科学的根拠を基に検証、つまり試して確かめることを繰り返して生まれた技術や経験などを統合して、専門的でないカジュアルな言葉で説明することで、医療ではなかなか結果の出ないといわれている長引くカラダの不調の多くが改善されています。
しかし、根拠に基づいた情報を受け入れられない人もいます。特に多いケースは、ご自身の経験や知識、世の中の常識が正しいという想いが強い人。例えば「最新の研究結果では○○ですよ」と私なりに丁寧に説明しても、「先生独自の考えではそうなのですね」と自分と違う考えを受け入れづらい人です。
私たち人間は成長する過程で様々な経験を積み、その経験から得られる「勘」は役に立つときがあります。しかし、私たちは自分の経験則や思い込みなどから、誤った判断をすることもあります。いわゆる「認知バイアス」と呼ばれる「思考の偏り」です。誰でもその傾向はありますので、偏見があること自体は問題ではありません。
しかし、その偏見に気づかずに生きているとしたら、問題になるかもしれません。全員が「自分」を盲信したままコミュニケーションすると、不用意な摩擦が生じかねないからです。さらに心身の不調という形で表現される可能性が、大きく高まります。
そのような傾向が強い人に対して、エビデンスレベルが高い情報を押しつけても、症状の改善に有効ではない可能性が高いです。厳密には科学的に間違った伝え方をした方が効果的なケースがあります。その際は、私は「ウソつき」になります(笑)。これは医学界ではNBMと呼ばれています。NBMとは「Narrative-Based Medicine」の略で、患者の背景にある物語と対話に基づく医療という意味です。患者の主観的な主張に寄り添う試みです。
慢性的なカラダの不調の多くは、脳の不調ともいわれています。ストレス反応から逃げたり無視したりすることで脳の機能が低下して、不調を感じやすくなるだけでなく、物事を論理的に考えられなくなったり、客観的にみられなかったりする状態になりやすいです。主観が強すぎる、いわゆる我が強い状態。我慢強いともいえます。ですから慢性的なカラダの不調の改善には、EBMとNBMを臨機応変にミックスすることが求められることが多いです。
とはいっても当整体院では、患者さんの主観的な意見を最も大切にしているわけではありません。もちろん私がウソをつかないことでもないです。バランス力学整体院が最優先しているのは、当整体院の価値観「カラダの悩みを2人3脚で根本的に解決することで、あなたの生活の質と幸福度の向上に貢献し続ける」と各々の「なりたい自分」への「有効性」です。ですから当整体院の価値観にまったく合わせられない人は、プログラムの継続が難しいです。
例えば、「自分は何も変えずに症状だけ取りたい」という考えに固執している人。もちろんバランス力学整体院に初めて来られたときに、そのような態度を取られている場合は、無理ない範囲で当整体院の価値観に近づけていただけるようにご対応させていただきます。なぜなら、そうしないと悩みの根本解決は難しいからです。「生活習慣を変えないで、生活の質を向上させたい」という非現実的な願いは叶いません。
また「なりたい自分」が、「治療院に通って頑張っている自分」に無意識になっているケースもあります。本人が気づかないうちに、もはや目的が症状を改善することでさえなくなっているのです。しかし、ご自身の本音と向き合うサポートをさせていただくことで、ありがたいことに当整体院の価値観に方向転換される人が多いです。
バランス力学整体院でカラダの悩みを解決されて、アフターケアでご利用されている方は、世間の常識と違う情報をお伝えしても淡々と受け入れられる人が多いです。科学者は真理を探究されていますが、私は当整体院の価値観を実現する方法を探究しています。専門家というよりは探究者です。今後も皆さまの生活の質がより向上するキッカケになれるように私は精進し続けますので、バランス力学整体院が持っている知識や経験などをうまく活用していただければ幸いです。
2022年も引き続きお互い協力することができれば、ありがたいです。来年もよろしくお願いします。
『あなたがいつまでも元気でありますように・・・・・・』
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました!
院長 山本浩一朗