2023年ばらんすだより
Vol.6 「なぜ人間は偏見や差別をしてしまうのか?」
こんにちは! 池袋バランス力学整体院の山本浩一朗です。
長く暑い夏が終わりそうですね。夏に比べて秋は日照時間が急速に短くなるので、精神を安定させる作用がある神経伝達物質「セロトニン」の分泌が少なくなるようです。「セロトニン」の分泌を増やすためにできることは、腸内環境を整える、適度な日光浴、十分な睡眠、運動、深呼吸など。日常的には朝30分の散歩と深呼吸、そしてたまには知らない土地に観光に行かれて、心身ともに満たされるようにご自身のカラダを動かしていくことをオススメします。
さて前回は、『落ち込みやすい体質は過度な○○と○○不足』をお伝えしました。「幸福感は意義を感じられることに没頭したときに、たまたま生まれる『おまけ』といっていた先生の幸福に対する意味づけが、とても参考になりました」「さんまさんが不安を感じやすい悲観的な遺伝子とは意外!」・・・・・・など、ご感想ありがとうございます。
また、「いろんな治療院に通いましたが、患者と対等で忖度なく指導するのは先生だけ。先生は忖度を大切にする日本の環境に合っていないかも(笑)」とも。さらに、「先生は偏見や差別が少ないように感じますが、秘訣はありますか?」といったご質問も。今回はその際にお話した内容をお伝えさせていただきます。
まず偏見や差別については、誰でも持っています。私たち人間の脳には、世界をカテゴリー化して理解するような習性があります。これは脳には認知的な限界があるので、複雑なものを簡単に分類するから。例えば、私たちが目に見える赤色は沢山の種類がありますが、簡略化して「赤色」のカテゴリーで認識しますね。同じように「性別」「年齢」「帰属」などでも相手を自動的にカテゴリー化するため、どうしても偏見や差別を行ってしまいます。
例えば、初対面の相手が子供や高齢の人だと危害を加えられる可能性が低いので警戒心が少なくなりやすいけど、若くて屈強な男性は本能的には生存への脅威になるから特別な注意をしてしまいやすいもの。
また人種もカテゴリー化しますが、様々な研究結果をみると、私たち人間は内集団と外集団に分類して、帰属でカテゴリー化する特性の方が強いようです。例えば様々な人種の人を集めて2種類の服をランダムに着せると、人種ではなく着用している服によって自然にカテゴリー化するようです。また同じ人種でも地域ごとにカテゴライズして、隣の地域というだけで互いに敵対視するケースもありますね。※もちろん人種による遺伝的な違いは科学的に論じられていますが、大きく取り上げると「差別主義者」のレッテルを貼られて社会的生命を奪われてしまう可能性があるため、世界的にタブー視する傾向があり、あまり表に出ていないのが現状です。
このようなカテゴリー化が作られると、私たちの脳は自動的に反応します。この人間の脳の性質を研究するためにアメリカの社会心理学者チームが開発した、偏見の度合いを客観的な数値で示すテストがあります。このテストの結果からは、人間は誰一人として偏見から自由ではないということが示されています。私たちは多くの人に浸透している固定観念や思い込み、つまりステレオタイプから自由になることはできないようです。これは人間の脳の基本的な機能だといえます。
では、なぜ人間はカテゴリー化して差別をするのでしょうか? 進化論では、環境から得られる資源が一定で、そこで暮らす集団が大きくなると、集団は分裂して複数の共同体(社会)が生まれ、同じ共同体の人とは協力して働くのですが、異なる共同体との競争に勝ち残ることが進化の最適戦略になるとのこと。これは人間だけではなく、巨大な社会をつくる生物は同じ行動をとるようです。
例えば、社会性昆虫のアリが帰属を表すのは匂い。自分と同じ匂いがする相手とは協力するが、異なる匂いを持つ集団と接触すると、アリたちは互いに殺し合うような特性を持っているようです。また、人間に遺伝子的に近いチンパンジーの群れは多くて100頭ほどで、メンバー全員を知っています。群れが大きくなって知らない相手が出てくると、自然に分裂します。
それに対して人類は脳の認知の限界を超えて、相手がわからなくても社会を成り立たせる必要がでてきました。そのときに使われたのが、敵か味方なのか瞬時に判断できる言葉(方言)、文化(服装、刺青、装飾品)、音楽など。アリと同じように味方と判断すれば協力し、敵だと判断すれば殺し合っていました。
人間が差別のない社会をつくるには、カテゴリー化をやめて、集団ではなく一人ひとりを見て判断するということになります。判断する人数に限界はありますが、理論上は可能。しかし先述した通り、差別する人間の特性が変わらないと実現は難しいです。
ただ、文明化によって異なる社会同士の暴力の程度が徐々に緩和されています。かつては殺し合っていた集団の争いも、現代では応援するスポーツチームの違いで争ったり、SNSで言い争ったりするように変わってきています。事件に発展するケースもありますが、昔に比べるとかなりライトになっていますね。
群れをつくる動物で、知らない相手と殺し合いにならない人間の存在は自然界では特殊。チンパンジーは他の群れと遭遇すると、オスと乳児を殺してメスを群れに加えるようですが、人間は進化の過程で暴力を抑制し温和になっています。この傾向が今後も千年単位で続けば、人類がカテゴリー化から解放される日が来るのかもしれません。ただ差別のない社会が、人間にとって生きやすいかどうかは分かりませんが・・・・・・。
ご質問いただいたように、私自身が偏見や差別が少ないのかは分かりません。少なく感じられることをあえて分析すれば、私に差別的な性質があることを私自身が受け入れているからかもしれません。今の社会で自分が差別的だと認めることはイヤかもしれませんが、「自分は人間だから偏見や差別をする性質があるので、偏見や差別をしている」ということを自覚して、私は生活していることが1つの要因として挙げられます。
なぜなら「自分には偏見や差別がない」と思っている人は、偏見が強く差別しやすくなる傾向があるから。実際、人種差別をしていないとアピールしている人は、違う差別、例えば性差別を正当化したりするといった研究結果があります。これは、道徳的に帳尻合わせをする傾向が人間にあるからだといわれています。
例えば、自分はマジメだと思っている人。自分は善人だから、ちょっとくらいヒドいことをしてもいいだろうと。また、公で話すときにキレイごとばかり並べる人は日常的には不愉快な言動が多くなり、平和を訴えている人は日常的には争いがち。自分は愛情深いと思っている人は「身内びいき」が過剰になり、外集団に対する憎悪や敵意が増しやすい傾向が。「愛」を強調しすぎると、世界はより分断されるようです。「愛・平和・善を語る人間は信用できない」といわれている人もいますが、この帳尻合わせをする行動が多くなるからだと思います。
また少し話が違いますが、私はマジメにダイエットしているから、今日くらいはたくさん食べてもいい。逆に昨日は食べすぎたから、今日の食事は控えめにしようと。この帳尻合わせは、周りがどう思おうと自分が納得できればOK。
さらに言えば、偏見や差別を持たないようにしようと意識すればするほど、偏見や差別心が強くなるという研究結果もあります。これは「偏見を持つな」と過剰に意識すれば、偏見について考えてしまうから。意識的に抑制しても意志力には限界があるので、抑え込んだ偏見が表に出てきてしますようです。この状態は、「思考抑制のリバウンド効果」と呼ばれる人間が本来持っている性質だといわれています。
バランス力学整体院が扱う慢性的なカラダの不調の原因の1つに、「我慢」があります。これは先述した「思考抑制のリバウンド効果」のように、抑え込んだ自分に不都合な感情をカラダの症状として表に出している状態。ご自身が特別な人間(人間を超える存在)になっていると無意識に思い込んでいるケースが多いです。
「自分は特別マジメ(周りが悪い)」、「自分は正しい(周りが間違っている)」、「自分は苦しみを感じない(周りより特別強い)」などなど。まさに、「我の慢心」。このような思い込みによって、人間が持っている性質を受け入れることができずに自動的に抑制して、カラダの症状で表現する習慣が身についてしまっているケースが多いです。
ただ自分が避けていた不都合な現実と向き合うことは怖いし、受け入れづらいものです。しかし、バランス力学整体院の「痛み改善プログラム」をキッカケに、ご自身が向き合うことを避けていた性質や感情を受け入れられるようになっていく人が多いです。1人で向き合うことは困難ですが、皆さまが当整体院をうまく活用して「受容力」を高めているプロセスを見させていただいているときは、私は幸せな気持ちでいっぱいになります。
ただ私が提供していることは、いいことかどうかわかりません。人によっては、自分の内面と向き合うという怖いことをしないで、カラダの症状でご自身の「精神的苦痛」を表現している方がラクだというタイミングもあるでしょう。「症状が改善することはいいこと」というのは、単なる思い込み。私がそう意識していることが独善的にならない抑止力になって、私の偏見が少なく見えているのかもしれませんね。
そのようなことも意識したうえで、私は「皆さまの生活の質が向上してほしい」という私のワガママな欲に基づいて、一人ひとりに合わせて皆さまの健康のサポートをさせていただいています。今後も私のワガママに付き合っていただければ、とても嬉しいです。
『あなたがいつまでも元気でありますように・・・』
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました!
院長 山本浩一朗