2020年ばらんすだより
Vol.2 「なぜ人は常識を疑いなく信じてしまうのか?」
こんにちは! 池袋バランス力学整体院の山本浩一朗です。
世間は新型ウイルスの情報でいっぱいですね。人間はよくわからないことに直面すると、少なからず不安を抱いてしまうものです。そんな状況のなか、無理に楽観論で不安を感じないように努めると、もっと不安が強くなったり、不満に変えて他人を攻撃したりしがちです。引き続き新型ウイルスの情報や不安を解消するエクササイズをお伝えしますので、気になる方はお声をかけてください。
また、この季節といえば「桜」ですね。情報などにお疲れの人は、人込みの少ないエリアで桜を見ながら散歩してみてはいかがでしょうか。
さて、前回のコラムで『カラダの不調を遠ざける思考法』として、自問自答して物事を多角的にみる「クリティカルシンキング」を紹介しました。「この情報社会の中で客観性を身につけるために必要な考え方ですね」「冷静に疑う力は正にいま大切ですね」など、いろいろなご感想をいただきました。
そして、私自身とても驚かされました。前回のコラムで「私が結婚したい人はすでに結婚している。私は2番目でもいいのに」という女性が増えていると紹介。それに対して「私のことです」、「私の未婚の友達はほとんどそのパターンです」・・・・・・などなど。30代にそのような女性が多いと聞いていましたが、その通りでした。このように生の声を聞くと、今の日本の結婚制度はもう時代に合わなくなってきているんだなぁ~と実感しました。
また、「なんで人間は常識を疑わずに簡単に信じてしまうのですか?」というご質問も。そこで今回は、その質問に対する私なりの回答をここで紹介させていただきます。
「常識」というのは、多くの人が当たり前のものと信じていること。時代や国・地域によってまったく違います。また、真偽とは関係ないものです。「常識を疑え!」という名言があるほど、放っておくと多くの人が自分で考えることなく、無意識に信じてしまう社会的な知識や価値観です。なぜ私たちは常識を信じやすいのか? その理由は、イスラエル人の歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリさんの学説を参考にするとわかりやすいと思います。
ハラリさんは、なぜ私たちホモ・サピエンスだけがここまで圧倒的に発展してきたかを解き明かした学者です。ハラリさんによると、私たちホモ・サピエンスが出現した頃には、すでに他の人種もいたようです。イヌやネコと同様に同じ生物だけど、ネアンダール人など違う種類のヒトが共存していました。私たちの祖先は、ラテン語で「賢い人間」という意味で「ホモ・サピエンス」と名付けました。しかし、賢さは他の人種と変わらない、もしくは少し劣っていたようです。まぁ~なんと傲慢なネーミング(笑)。さらに肉体的な力は、ヒト属のなかで最も弱かったようです。
そんな最弱スペックなのに、なぜ生き残れたのか? それは約7万年前に遺伝子の突然変異で、ホモ・サピエンスが新たな能力を手に入れたからです。その能力は「虚構を語り信じること」。つまり、実際にはない物語をつくったり信じたりする「妄想力」です。この能力を獲得したことで、私たちホモ・サピエンスは、約1万3千年前にヒト属で現存する唯一の種になれたのです。
私たち現代人が何となく信じている具体的なフィクションとして、3つの例を挙げます。 1つめは「国」。どこまでがどこの国なのかを信じています。ただ、日本は島国なので都道府県の方がわかりやすいかと。ここまで東京都でここから埼玉県。国名や国境などは、誰かが決めたことです。しかし、多くの人は疑問なく受け入れています。
そして2つめは「貨幣」。お札自体はただの紙切れでほとんど価値がありません。しかし、私たちは共通の認識として紙幣の価値を共有していますので、コピー紙のようにお札を破るのは難しいですね。例えば、腹ペコのネコであれば、百円の肉と1万円札を並べると迷わず食料を選ぶでしょう。でも、多くの人は紙幣のルールを信じているので、1万円札を選びますね。
3つめは「神」。神の存在を証明することはできていません。科学が発展し伝統的な宗教の教えに矛盾が生じてきた現代でも、世界の多くの人が「神」の存在を信じています。様々な神話をつくって「宗教」をつくり、それぞれが真実だと語り継がれています。東洋思想を持つ私たち日本人だと「輪廻転生」をなんとなく信じて、「前世」「来世」という言葉を普段の会話に使うことに違和感ない人が多いと思います。でも、そんなものは現実にはありません。私たちにしかない「作り話を信じて共有する」特殊能力で、この「想像上の秩序」が成立してしまうのです。
私たちは、このウソやうわさを信じる力という強力な武器を手に入れたことで、弱肉強食の争いに勝つことができたのです。うわさで「あの人は素敵な人だよ」と言われるとなんとなく信じてしまいますね。また、マンガなどは作者の作り話なのに、「登場キャラクターの○○が好き」というだけでなく、「私も好き」といって仲良くなることもできます。他の人種は、動物と同じように自分が目の前で見た現実しか信じられませんでした。うわさを信じられないので、大きな集団をつくることができないのです。せいぜい50人規模のチームしか作れなかったようです。
一方、うわさ話を信じる能力がある私たちは、大規模のチームを作ることが可能。オリンピックなどの世界大会になると、急に日本人であることを強く意識して「日本人の誇り」とか言ったりしていますね(笑)。私が海外で生まれていたら、日本人以外に分類されていたかもしれません。また、国籍はすぐ変えられます。つまり、「私は日本人」というのもフィクションです。しかし、多くの人が信じることでチーム化できるのです。物語や神話をつくって連携して、大勢で協力することができるようになったのです。
優れた知力や体力もないホモ・サピエンスが生き残った主因は、「数の力」。ウソをつくって信じる能力を獲得したという「認知革命」によって、ホモ・サピエンスはライバルである他の人類種を滅ぼし、肉体的に敵わない大型動物を追い払うことができたのです。私たちは「ウソ」に守られて、「ウソ」に生かされているのです。
ですので、私たちは多くの人が支持するフィクションを信じた方が、生き残りやすいことを本能的に知っているのです。自分の命を守るために、ウソを信じてしまうのです。ただ、情報があふれた現代社会では、その性質があだとなっているケースが増えています。私たちのその特性を利用してか、悪質なデマやフェイクニュースが出回っています。いつもならスルーできる情報でも、精神的に余裕がなくなった状態だと、皮肉なことに生き残ろうとしてダマされやすくなるのです。ガンなどの大病で生死に関わる情報は、特に注意が必要です。
実際、今回の新型ウイルスで、国民の不安に寄り添った根拠のない意見が支持されやすく、反対に専門家ベースの決断は批判されやすくなっています。国民の命を守ることを優先した選択は、多くの日本人が抱く不安やニーズからかけ離れていたので、不満に感じる人が多くなったのでしょう。私は必要性を感じて新型ウイルスの論文等に目を通していたので、その状況が理解できました。
では、皆さんも同じようにした方がよいかというと、それは違うと思います。趣味であればいいですが、私も自分の専門外のことは、必要以上に情報を追っていません。プログラミングとかサッパリわかりません(笑)。前回お伝えした「クリティカルシンキング」を身につけることは生きるために役立ちます。しかし様々な情報は、一人ひとりが自分の専門や興味があることを追求することで、互いに連携していく形がいいと思います。私たちは協力することで、生き残っているわけですから。
「ウソはダメ」という考えが日本では強いですが、フィクションが世界を形成しているということを自覚したうえで、作り話を信じることはいいと思います。「神」を信じることで心が安らぐのであれば、信じた方が生きやすくなるでしょう。私たちの特殊能力を発揮するため、「国」や「貨幣」のルールを受け入れた方が、現代では生活しやすいはずです。
反対に自身を苦しめるフィクションは信じない方がいいです。バランス力学整体院が専門に扱う「慢性的なカラダの不調」は、身体に悪影響な「うわさ」で作られたものが沢山ありますね。「寒くなると腰痛になる」「正座で膝を痛める」……などなど。多くの人が信じているので、その症状で悩む人が年々増えています。そういった意味では、当整体院は多くの人が信じている「ウソ」に逆らっているともいえます。さらに、バランス力学整体院のプログラムを利用して、信じやすい「常識」に逆らうことができた皆さまは、素晴らしいです!
また、新型ウイルスで情報があふれるなか、他の治療院では痛みが再発したり、精神状態が不安定になったりする人がいると聞いています。しかし、バランス力学整体院のプログラムを経験された人は、心身の不調を訴える人が今のところ一人もいません。体だけでなく認知のゆがみにまでアプローチする当整体院のプログラムを通して、情報に踊らされなくなっている、またストレスを溜め込まないセルフケアを実践されているからだと思います。とてもうれしいことです。今後もバランス力学整体院が持っている知識や経験などをうまく活用していただければ幸いです。そのために私は精進し続けます。
『あなたがいつまでも元気でありますように・・・』
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました!
院長 山本浩一朗