2014年ばらんすだより
Vol.5 「心を苦しめる『よい子』の習慣」
こんにちは! 池袋バランス力学整体院の山本浩一朗です。
今月から始まったサッカーW杯。盛り上がっていますね。地球の裏側、時差12時間のブラジルでの開催ですので、寝不足の方も多いようです。私もその一人です(笑)。人間の生物的な3大欲求の1つの「睡眠欲」。この欲がある程度満たされないと、ストレスが溜まりやすくなったり、イライラしやすくなったりするものです。自戒の念を込めて、十分な睡眠をしっかり取っていきましょう!
さて、前回のコラムで「日本の多くの人は子供時代に自己否定感が強い親の言うことに従って、いわゆる『よい子』になろうとしている」とお伝えしましたが、「自分はこの『よい子』だったので、とても共感しました」という感想をいただきました。その中には、「今でもそのクセが抜けていません」という方も。やはり、私のように親に反発を繰り返して迷惑をかける、いわゆる「わるい子」は少数派なのでしょうか(笑)。
では、なぜ多くの人は、自分の気持ちを抑えてまで親にとって「よい子」になろうとするのでしょうか? それは、私たち人間は、幼い頃は一人で生きていくことができないからです。子供は衣食住を確保できないので、生活の基本的なことは親(大人)に依存せざるを得ません。そんな子供にとって、親から拒否されたり、見捨てられたりすることは、命の安全が脅かされるほどの恐怖なのです。ですので、親に関心を持ってもらうために子供はいろいろ試みます。また、兄弟姉妹がいる家庭では、その中で一番愛されるように工夫します。いっぱい甘える、わがままを言う、反抗する、問題行動を起こす、病気になる……などなど。その形は様々です。そして、一番効果があったものを成功体験として身につけていきます。そのなかで多くの日本人は、「よい子」になることで自分の身の安全を守ることに成功しているのです。その理由は、自分の都合のよい子になることを望んでいる親が多いからだと思います。「よい子」を演じると親がとても喜んでくれるので、子供にとってその期待に応えることが一番の安全だと無意識に学習して、習慣になってしまうのでしょう。
そして、幼少期に自分の気持ちを抑えてでも、親を喜ばすことで安全を得たことを大人になっても他人に適用する人が多いです。「人の期待を裏切らないように」という思いが強い人です。冷静に考えれば、人の期待を裏切ったところで、大人の私たちは命の危険はありません。それでも、子供の頃に上手くいった方法に無意識にしがみついているのです。「人を喜ばせなければ」と。いつも相手の欲求や気持ちを優先しているので、相手のことを尊重しているようにも見えますが、相手の顔色をうかがって断ることもできずに自分の感情を抑え続けることで、無理が生じます。人間関係を心から楽しめなくなって、やがて相手の関係に疲れてしまいます。その結果、被害者意識が強くなって、相手に対して敵意や怒りを覚えたりする場合もあります。それでも、その関係を維持しようとすれば、ずっと自分の感情を抑え続けて、自己犠牲的で過度な依存関係になってしまいます。自分で気持ちを抑えたにもかかわらず、自分の欲求を満たしてくれないと相手を恨んだりしがちです。
そのような状態になると、心の中に安心感が育っていないので、精神的に自立しづらくなります。逆に大人になって精神的に自立している人は、子供のころ親に十分に甘えた人です。この甘えの中には、わがままや反抗も入ります。前回のコラムでお伝えした私の家庭では、私の存在を無条件に受け容れてくれるおじいちゃんという安全基地が私にはあったので、私は反抗という形で母親に十分甘えることができました。お陰で特に中学生の頃から「精神的に自立している」「自分の意見をしっかり言える」「言いなりにならないので、扱いにくい(笑)」といった評価をされることが多くなりました。 自分では今現在も依存的な部分がまだまだ沢山あると思いますが、家族にたっぷり甘えたことで、親への依存心が自然に減っていったのだと思います。子供の私にもしっかり意見を言い合うことが許される環境を作ってくれた家族には、今ではとても感謝しています。
親に対して従順で聞きわけのよい子は、自分の欲求や感情を大切にできなくなってしまいます。自分を大切にできなくなると精神的に辛くなります。そのような人が自分を取り戻すためには、自分の欲求や感情に気づいて、それを大切にしていくことが必要です。ただ、何か分かりやすいキッカケがないとなかなか気づけないものです。そのキッカケは様々あると思います。例えば、結婚を機に子供のころ抑えていた気持ちが爆発する方もいます。親にして欲しかったことをパートナーに求めるのです。その結果、自分の気持ちに気づけるようになって、深いパートナーシップを築く人がいます(反対に、感情が爆発したことを性格が悪くなったと勘違いする人、自分が変わったことをパートナーのせいにする人もいるようですが……)。ただ、一番多いキッカケは、自分を大切にしない習慣で、自らの心や体に痛みを作ることです。当整体院に来られる方の多くは、慢性的な体の痛みに悩む方です。やはり傾向として、いわゆる真面目な方、頑張り屋の方、自己犠牲的な方といった、おそらく子供の頃「よい子」を演じて安全を確保していたと思われる方が多いです。慢性的な体の痛みは心の悲鳴です。「自分の気持ちを無視しないで!」「もっと大切にして!」と体が丁寧に教えてくれますので、その痛みを解放しようと行動する過程で、本来の自分を取り戻せることができるのです。
自分の気持ちをごまかす習慣があった方が、当整体院で体の痛みを解放することを通じて、自分の気持ちを大切にすることに許可できるようになる方が多いです。実際、体の状態がよくなったというお声と同時に「運が良くなった。」「人生が好転してきた。」といった嬉しい報告をよくいただきます。具体的には「本当にやりたいことが見つかって転職が決まった。」「理想のパートナーが見つかった。」「家族や会社の人間関係がよくなった。」……などなど。こんな報告を聞いて感動している私は幸せ者です。ありがとうございます!
ただ、当整体院は単なるキッカケにすぎません。状況が好転してきた方は、心身のゆがみを整えることで、自分の気持ちを抑えることをやめて、ご本人の素直な気持ちに敏感になったのだと思います。もちろん、自分の気持ちをかなり抑えてきた方は急激な変化は恐いものです。「自分を大切にしなければ」ではなく、「相手を優先してもいいし、自分を大切にしてもどっちでもいい」とその時々で自分が安全だと思う方を自ら選択していくことで、徐々に自分を大切にできるようになる方もいます。
親や社会が作った「よい子」のカプセルから抜けると、心の自立度が高まります。ただ、自立といっても全く依存しなくなることではありません。自分が様々なことに依存していることを自覚していない状態は、自立ではなく孤立です。感謝の気持ちを感じられなくなり、態度も傲慢になっていきがちです。依存は生きていくうえで必要なことですし、心の自立度をより高めるためにも必要なことです。前回のコラムでもお伝えした通り、皆さまとは患者と治療家という立場でよく見られる共依存関係や孤立した関係ではなく、どこまでが自分の責任かという境界線のある自立した健全な相互依存関係(協力関係)を今後も築いていきたいと思っています。まだまだ未熟な私ですが、今後も精進していきますので、ご協力の程よろしくお願いします。
『あなたがいつまでも元気でありますように・・・』
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました!
院長 山本浩一朗